#2-1 『星の王子様』 サンテグジュペリ

Le Petit Prince

『星の王子様』

読んだことがあるかは置いておくとして、聞いたことがないという人はほとんどいないと思います。

実は知らない…という人のために念のため。

『星の王子様』はフランス人の飛行士・小説家であるサンテグジュペリの代表作。1943年に出版されて以来、200以上の国と地域の言葉に翻訳され、世界中で愛されているロングベストセラーなのです!

 

もともとの題名は『Le Petit Prince』、これはフランス語。(英語での題名は『The Little Prince』)

日本語に直訳すると「小さな王子様」。

こういうことを言うのは良くないかもしれませんが、日本ではごくありふれた平凡な題名な気がします。気がするだけですよ…。

ちなみに『星の王子様』は内藤濯氏の創案(1953)らしい。フランス語・英語では原題のほうが良いだろうけど、日本語だと『星の王子様』のほうが僕は好きです。

何が言いたいかって言うと、翻訳者ってすごいなぁってこと。

 

『星の王子様』から学ぶ「大切なこと」

いまさら僕が言うことではないとは思うんですが、さすがに「星の王子様」について書くのに避けては通れないだろうってことで書いていきます。というのも、『星の王子様』は「こどもの心を忘れてしまった大人に示唆を与える本」と言われているからです。(ほかにも解釈はあるけど、あとで書くことにします。)

 

※僕はフランス語が読めないので(大学で選択した第2外国語がフランス語だから仕方ないですね、あれ?)、日本語訳『星の王子様』(集英社文庫 岩澤夏樹氏訳, 2005)・英語訳『The Little Prince』(Mariner Books,翻訳者・出版年不明)を読んでいるということをご理解ください。もしかするとそれにより原文とは違う捉え方になっている可能性があります。もちろん僕がしがない大学生ということもお忘れなく!

注意書きが長くなりすぎました、ごめんなさい。さて、そろそろ本題にまいりましょう。

 

大人は何か大切なことを忘れてしまっている

献辞(本文の前の「○○に捧ぐ」みたいなもの。)からそう読み取れるのですが、これは1冊を通してずーっと言われ続けることになります。それが何かを、そしてその大切さを教えてくれるのが『星の王子様』ってわけです。

 

“大人は誰でも元は子供だった(それを覚えている人は少ないのだけど)。”

 

本当は献辞は全文読んでほしいけど著作権とかが分からないので、引用は1文だけにします。ここでは、この献辞が『星の王子様』は「大人向け」と言われる根拠になるのだろうと言うに留めることにしましょう。

 

ここから先は本文についてなので、もし内容を知りたくないという方がいたら、先に読んでから戻ってきてください。

 

大人が大切にしているものってなんだろう

王子様は自分の惑星から飛び出し(本文では「脱出」「escape」と表現されています。)、旅をすることになります。小惑星を6つ訪れるのですが、そこの住人はみんな変わり者でした。彼らは「大人」の象徴的存在だと思うので、彼らからきっと教訓が得られるはずです。

 

先に言ってしまいますが、どの惑星で学べることも「○○に固着しすぎると大切なものを見失ってしまいますよ!」ということです。

まずは惑星の住人たちの紹介をすることにしましょう。

 

1つ目の惑星。権力を愛してやまない王様。
2つ目。他人はみんな自分を崇拝していると思っているうぬぼれ男。
3つ目。酒飲みである恥ずかしさを忘れるためにお酒を飲むという酒飲み。
4つ目。お金が大好きなビジネスマン。
5つ目。1分に1回自転する星の点灯夫。
6つ目。海や山を見たことがない地理学者。

 

大人がしばしば溺れてしまうもの。権力・名声・快楽・富。

これらが良くないというのはみんな分かるでしょう。では、5つ目・6つ目の惑星の住人は何が良くないのでしょう?これがちょっと難しいのかも…。

 

点灯夫が溺れているのは…オリエンタルラジオ中田敦彦さんの言葉を借りると「労働」。(学生なら「勉強」と置き換えるのが良いでしょう。)ただ「労働」といっても、それ自体が悪いわけではないのです。僕が思う、この点灯夫の良くないところは2つ。まず1つは、指示に盲目的に従っていること。もう1つは、自分にとってより大切なことを忘れていること。

「労働 / 勉強」をする意味。自分にとってそれより優先順位が高いもの。あらためて考えてみるのも良いかもしれませんね。

 

地理学者については「〇〇におぼれている」という形では書きにくかったので、少し言い方を変えることにします。

簡単に言うと、1つのことにだけ没頭して、視野が狭くなるのは良くないよーという話です。実際の学者さんは自分の分野はもちろん、それ以外のいろいろな分野も勉強します。(そのほうがより良い研究ができるらしい。)これは学問以外でも同じこと。

遠回りに思えても、広い視野でさまざまなことにチャレンジすべきってことですね。

 

ほんとうに大切なものってどんなもの?

“大切なものは、目には見えない。”

「星の王子様 名言」とかで検索するときっとまっさきに出てくるはずの、すごくすごく有名な言葉です。人間は(というか「大人」は)目に見えるもので物事を判断しがちだけど、それでは本質を見失ってしまうということを心のどこかに留めておきたいものです。

 

具体的なことをもう少し。本文にはこうあります。

“新しい友だちができたよと言っても、大人は大事なことは何も聞かない。「どんな声の子?」とか、「どんな遊びが好き?」とか、「チョウチョを収集する子?」などとは聞かない。”

思い当たる人も多いのではないでしょうか。兄弟の人数とか、身長とか、年齢とか、そんな「目に見えるもの」より大切なのに。

いつのまにか「大人」になってしまったと嘆くのではなく、ほんとうに大切なものを「みる」ようにしていきたいものです。

 

 

 

唐突に話が変わりますが…、あなたは「愛ってなんだろう?」って考えたこと、悩んだことがありますか?いつかそんな日が来たら、『星の王子様』を読み返してほしいな、なんて。

(ぼくは何を書いているんでしょう…。) 

 

おわりに

残念なことに、この世の中は「大人」であふれています。何かを追い求めるばかりに「大切なもの」を忘れてしまった大人。

時計の針に追い立てられ、預金通帳のゼロの数と名刺の名前の上の数文字だけが誇れる現代社会では、そうなることは仕方がないのかもしれません…。

しかし、それはなんとも寂しい話ですよね。

『星の王子様』に出会った人が、そして僕の文章を読んでくれた人が、そんな悲しい大人ではなく、素敵な「おとな」になることを願って、今回はここでおわりとします。

 

 

追記

いざ書いてみると、思った以上に字数が増えてしまった(レポートの2,000字は大変なのに、今回は3,000字が一瞬でした…。)ので、2回に分けることにしました。#2-2では、教訓というほどではないけど、学んだこと(というか思ったこと?)を紹介する予定です。

 

これが初の記事であるにも関わらず、#2となっていることを不思議に思った方もいるかもしれません。実は#1の記事は現在執筆途中(絶賛挫折中)です。それを書きたいがためにブログを開設したのにもかかわらず、扱う内容が内容だけに公開には至っておらず、なるべく自分の考えが誤解なく伝わるようにと修正を重ねているところです。できるかぎり早く完成させるつもりなので、そちらも読んでいただけると嬉しいです。

扱う本は『彼女は頭が悪いから』(文藝春秋, 姫野カオルコ, 2018)です。

いま話題になっていますし、いろいろと考えさせられる本ですので、ぜひ。